行政改革担当大臣が各省庁に「脱ハンコ」を指示したことが話題にあがりましたが、「働き方改革」「外出自粛」「人との接触頻度」の観点からも、脱ハンコは一考に値すると思います。
あなたの職場でも、脱ハンコを検討されているでしょうか?
ここでは、脱ハンコで得られる効果、導入についての注意点をまとめているので、脱ハンコに関する取り組みについて一緒に考えてみましょう。
なぜ脱ハンコが叫ばれているのか?
古くから、日本の商習慣において広く浸透しているのがハンコ文化です。
その書面を確認しまた、認めました、という意味でハンコを押すというのは、日本の社会では当たり前のように行われています。
しかし、時代はだいぶ進みました。
ハンコの文化は、現代のような通信技術やコミュニケーションツールなどが存在しなかった時代に生まれた文化です。
便利なITツールがどんどん生まれてくる現代において、ハンコの文化は果たして本当に必要なのでしょうか?
今一度よく考えてみる必要があると思います。
2020年6月にアドビシステムズが実施したアンケートによると、「ハンコの習慣は無くしたほうがいい」という回答が74.7%に上りました。
それではなぜ、古くからの商習慣として根付いているハンコ文化は不要だと言われているのでしょうか?
1.ペーパーレス化が進まない
ハンコは当然のことながら紙に押印します。
つまり、ペーパーレス化が進まない大きな要因となります。
さらには押印された書類を保管しておくための管理業務や物理的なスペースが必要になります。
書類のファイリングやラベリングは、地味な作業ですが意外とコストがかかります。
また、保管する書類が増えれば、事務所とは別に倉庫を用意しなければならなくなるかもしれません。
そうなると出費だってばかにはならなくなりますよね。
2. 業務効率や生産性が上がらない
日々のワークフローの中に「押印」という作業がある場合、押印のためのムダな作業が発生することがあります。
例えば、
- ハンコをもらうためにわざわざ出向く必要がある
- ハンコをもらうために根回しが必要なこともある
- ハンコをもらう相手が不在だと業務が止まってしまう
- 決裁のための回覧に時間がかかる
などです。
1つ目にあげた「出向く必要がある」をとってみても、すぐ近くの人に押印を求めるならさほどではないかもしれませんが、フロアが違うとか、建屋が違うとか、拠点が違うとかになった場合には、sの距離に応じてかかるコストも時間も増えていきますね。
「時間がかかる」「業務が止まる」に関しては、仮に電子決裁を導入したとしても、多少は発生する問題かもしれません。
ですが、物理的にその書類がある場所にいる必要があるのとないのでは、その処理スピードは全然変わってくると思います。
3. 押印のためだけの仕事が発生する
2020年に流行した新型コロナウィルスの感染拡大騒動のとき、外出自粛に伴い在宅勤務・テレワークが強力に推奨されました。
そのときに話題になったのが「ハンコを押すためだけに職場に行かなければならない」ということでした。
これは、上にあげた1、2の弊害の最たるものだと思います。
未知の感染症が流行している時に、ハンコを押すためだけだけに外出をしなければならない?
しかも、不特定多数の人が利用する公共交通機関で??
そのハンコ、本当に必要なんですか???
って思ってしまうのも無理はありませんね。
もちろん、法律で義務付けられている書類など、どうしても紙で保管しなければならない書類もあるでしょう。
そのような書類は仕方ないにしても、慣例にしたがって運用しているだけの書類って、かなり多いのではないでしょうか?
脱ハンコのメリットは?
それでは、脱ハンコのメリットってどんなことでしょうか?
生産性の向上
それは前項で上げた逆のこと、すなわち一言で言うならば「生産性の向上」です。
ハンコが必要な書類の作成、承認依頼・確認、保管・ファイリングなどの業務が不要になります。
これらは個別に見ればわずかな時間の作業かもしれません。
しかし、塵も積もれば山となるで、小さなことの積み重ねをないがしろにしないことが大切なんです。
たとえわずかな時間でも、不要になったならば本来の業務やクリエイティブな作業に充てられる時間も増えるでしょう。
また、早く仕事を終わらせられれば残業の時間も減らせるかもしれません。
ここまでできて初めて「生産性の向上」が言えるのです。
ほかにも「保管のための倉庫がいらない」となったっ場合には、し
テレワークへのシフト
物理的にハンコを押すという作業が必要なくなれば、わざわざ出勤する必要もありません。
出勤の必要がなくなれば、通勤時間を仕事の時間に充てることができますね。
しかも、苦痛の枚員電車に揺られて、朝からくたくたになって仕事をしなくてもいいんです!
だから生産性も向上するんです!
と、単純にはいかないところもありますが、今まで使えなかった時間が使えるようになれば、時間的な余裕はできるわけで、気持ちにも余裕ができれば、仕事の質も上がるのではないでしょうか?
「働き方改革」というワードが叫ばれていますが、日本の中小・零細企業ではまだまだ長時間労働が常態化していることは否めません。
さらに少子・高齢化による人手不足が長時間労働に追い打ちをかけることは誰が見ても明らかです。
だからこそ、少しでも短縮できる時間があれば削っていくということが、ますます必要になってくるでしょう。
脱ハンコを進めるには?
それでは脱ハンコを進めていくにはどうすればいいのでしょうか?
「脱ハンコ」といっても、単にハンコを押すのをやれめればよいというものでもありません。
中には、形式的ハンコを押す欄がある書類もあるでしょう。
そういう書類は単純にハンコの欄を削除してしまえばよいと思います。
ですが、ハンコが必要な多くの場合は、上司の確認や承認が必要なものだと思います。
現在ではIT各社から「電子署名サービス」という分類の商品が発売されています。
簡単に言ってしまえば、自分の署名やハンコを電子化してしまうというものです。
電子署名を利用すれば、決裁などの業務のフローがパソコンの中で完結してしまいます。
すなわち、物理的な書類やハンコが必要ありません。
ということは、テレワークやペーパーレス化にも大きく貢献できるわけです。
ただし、注意しないといけないことがあります。
電子署名や電子印鑑といっても、単にサインや陰影を画像化したものを使ったり、フリーのハンコソフトを使ってしてしまうと落とし穴に落ちる場合があります。
電子化するということは、裏を返せば「コピーも容易になる」ということです。
決裁書類が簡単に改ざんされてはマズイですよね?
ですから、脱ハンコを進めるときには、「他の人が勝手に署名できないこと」「改ざんができないもの」を導入するということが大前提です。
それらが担保されれれば、あとは自社の業態に合わせて使いやすい(と思われる)ものを導入するのがよいでしょう。
もちろん、導入にはある程度の費用がかかりますが、導入する場合のコストと、導入しない場合のコストをきちんと比較して、コストメリットが最大になるものを選べばよいと思います。
まとめ:脱ハンコのメリットは?ハンコをやめれば本当に生産性は上がるの?
- ハンコの文化は「ペーパーレス化」「テレワーク推進」には障害になることがある。
- 脱ハンコが実現できれば、時間を有効に使える機会が増える
- 脱ハンコを進めるときは、適切な業務管理ツールを導入することが大切
古くから染み付いた慣習というのはなかなか変えられるものではないかもしれません。
ハンコで生計を立てている方々もおられるわけですし、ハンコが必要な場面というのもあるわけですから、何でもかんでもハンコをなくせということでもありません。
ただ、「そこに本当にリアルなハンコが必要ですか?」ということを考えてみてほしいのです。
脱ハンコを進めるには「社内の慣習を変える」ことが必要になりますが、実はこれが一番むずかしいことなのかもしれません。
人間というのは変化を嫌う生き物だと言われます。
新しい取り組みを始めようとすると、たいがい反対する人は一定数いるのですが、それはもう織り込み済みだと考えましょう。
古くから根付いた慣習を変えることは相当のパワーを要することです。
でも、世の中の変化に対応できなけなければ、淘汰されていくことは歴史が証明しています。
脱はんこもできるところからはじめてみてはいかがでしょうか?